内需拡大 2009.7.10
与謝野財務大臣が、景気は底入れし世界の景気回復が進めば、日本の製造業は再び活気を取り戻すといった論調のコメントがあった。日本の経済を支えた製造業の復活を夢見ているが、果たしてそうなるか甚だ疑問だ。
1960~70年代の日本の年齢構成は、団塊世代を中心に社会全体が若々しかった。現在の中国やインドのような状況で、安くて良い物を造ればアメリカをはじめ世界中で売れた。40年経った今は、欧州の先進国が辿ったと同じ、衰退期に入っている。
製造業を中心とした産業が、今後中国やインドに勝てる要素は非常に少ない。数年後にはGDPで中国が日本を追い越す予想が立てられている。人間の成長と同じように、国家にも栄枯盛衰のサイクルがある。現在の年齢構成、出生率を考えれば老齢社会は目前に迫っている。
これまで日本はアメリカを手本とし、経済や政治を模倣してきたが本当に良かったのか。
アメリカは独立戦争以後、若い世代が豊富な資源を元に、石油、鉄鋼、自動車、コンピュータなどの新産業を興し世界経済を牽引してきた。政治的にも圧倒的な軍事力をもって、世界のリーダとなったが、中東での軍事介入の失敗や、2008年の金融ショック以来、政治的・経済的な凋落は著しい。貧富の格差、失業率、犯罪件数などマイナス要素は先進国でトップクラスだ。
最近、「デンマークの高齢者が世界一幸せなわけ」ほか、数冊の北欧に関する本を読んだ。目から鱗の話が多くその一部を紹介したい。
デンマークの所得税は累進課税で、38.8~59%、消費税は25%、その他間接税(贅沢税)が別途課税対象になる。日本では所得税は5%~40%の累進課税である。
税金だけを考えると、デンマークが如何に高負担かがわかる。
しかしながら、教育・医療・介護など国民が生きるために必要な負担は、ほとんど無料だ。
子供が生まれても、教育費や、医療費で悩むことはない。子供は社会の宝という概念で、(日本でもかつてそのように言われていたが)社会が一丸となって育てるというコンセンサスがある。また、老人医療や介護についても基本的に税金で賄われる。介護できる家族がいるから補助金が出ないということはない。むしろ、働ける年代の人が働きやすいように、子供や老人は社会が面倒をみるという考え方だ。従って女性の労働率は72%と男性労働率の78.2%と拮抗している。女性の自立性が高く、その為か離婚率も42%と非常に高いが、収入がないからとか、子供がいるから離婚できないという日本と比べれば、むしろ精神的なストレスは女性に少ないように思われる。
デンマークの年金は65歳から支給される。デンマーク人の人生観は、18歳(成人)までの学習期と65歳までの勤労期(家族、友人、仕事を大切に考える)そして65歳以降は、収入よりも社会貢献期という考え方で、人によっては50代から、65歳以降の仕事へシフトするため、例えば福祉関連のスクールで勉強し直し資格を取る人も多いようだ。スクールの費用は、福祉関連の事業組織が持ち本人負担はほとんどない。その他沢山の事例があるが、要するに税金は国民のものであり、それをどのように活用するかが重要なのであって、税の多寡で判断すべきでないことが分かる。
また、日本は世界有数の経済大国といわれているが、これまでは外貨を稼いでもその多くをアメリカ国債や、ODAなどに拠出してきている。もっと内需拡大のために使うべきではないか。北欧の高福祉高負担社会のモデルは、内需拡大のため施策として大いに参考になる。
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