2010年7月20日火曜日

理外の理

理外の理                 2006.10.11


世の中には、多くの法律や基準、規定などがあります。

何の為かといえば、世の中の混乱を防ぎ、一定のコンセンサスの中で仕事や生活をする為。ということになるのでしょうか。

 ところが、お役所仕事といわれる「そのような前例はありません」とか「そのような法律はありません」という理由で、庶民が本当に困っていることに手を差し伸べるという、本来の行政の目的を忘れ、規定が無いことを楯に対処しないことがしばしばあります。

 将棋の世界では「名人に定跡なし」という諺があります。定跡は数え切れないほどありますが、プロであれば当然のように知っており、逸脱することは多くありません。

ところが、定跡を逸脱しアマチュアがやるような手を名人が指すことが稀にあります。

そうすると「新手が出た」と大騒ぎになり、大いに研究され、場合によっては新しい定跡にまでなることがあります。

 名人とはそのような尊厳と信頼があります。また、名人ほどの実力なら、定跡に捉われない創造の世界を期待されているともいえます。



 前回「数式の不思議」を寄稿しましたが、その中で鉄骨構造物のCADシステムのお話をしました。顧客は大手鉄鋼メーカで、当時基幹システムを多く開発されていました。標準化が進んでおり、品質管理には異常なほどの管理規定がありました。

バグなどで高炉が停止すれば、何十億の損失になりますので、当然ともいえます。

 当初CADシステムの開発についても、その標準化を適用するように指示されましたが、私は開発する案件の特徴と、開発期間を考え断固反対しました。

 CADシステムは結果の確認が容易にできることと、もしバグが発生しても影響の範囲が少ないこと、またコストパフォーマンスを考えると、標準化が足枷になることを訴え、新たな開発標準のガイドラインを示し、了承していただきました。

また、ユーザサイドから出された、外部仕様書は建築の専門家の書いた仕様書で、ほとんど建築設計書のような類で、コンピュータシステムにどう乗せるか皆目見当がつきません。そこで、新たに外部設計書確認書というドキュメントを作り、入力項目、処理内容、アウトプットの項目を明確にして、承認を得るようにしました。



 私たちの仕事は、顧客の要求を全て正確に理解することと、私たちが理解したことが顧客の要求に合致しているかを確認することが大事だと思います。

当然、マネージャであれば出来ること出来ないことの判断と、顧客の説得も必要です。



 標準化や規定は守るべきものではありますが、固執すべきものではありません。

規定類を遵守することで、場合によっては目的達成の阻害要因にもなります。

標準化や規定はあくまで、目的達成のための手段の一つに過ぎません。

その意味で「理外の理」は常に存在するのです。

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